-Growth and applications of GeSn-related group-IV semiconductor materials
Published : 2015.07.28 / DOI : 10.1088/1468-6996/16/4/043502
シリコン(Si)系半導体集積回路のさらなる多機能化,省電力化,高速化に向けて,ゲルマニウム(Ge)と錫(Sn)の混晶であるGe1?xSnxとこれに関連するIV族半導体材料が注目を集めている.Ge1?xSnxはその特徴的な電子物性から,トランジスタなどの電子デバイスのみならず,赤外光検出ダイオード,発光ダイオード,さらには半導体レーザーなどの光電子デバイスへの応用も期待されており,近年,本研究領域に参入する研究者,研究機関が世界的にも急増している.
財満鎭明(名古屋大学),中塚理(名古屋大学)らによる本レビュー論文“Growth and applications of GeSn-related group-IV semiconductor materials”においては,Ge1?xSnx関連半導体材料の薄膜結晶成長,その結晶および界面物性の制御技術と,本材料の電子・光電子デバイスへの応用について,最近の進展を報告している.
Ge1?xSnxは,Sn組成によってエネルギーバンド構造の制御が可能であり,特におよそ8%以上のSn組成において,Γ点の伝導帯端がL点のそれよりも低くなるindirect-direct crossoverが生じる結果,III-V族化合物半導体などと同様の直接遷移型半導体となることが知られている.そのため,直接遷移化を活かした光電子デバイスや,Γ点における小さな電子有効質量を活用する高速あるいは省電力トランジスタなどへの応用が期待されている.しかしながら,これまで広く研究されてきたシリコンゲルマニウム(Si1?xGex)のような全率固溶型の混晶とは対照的に,Ge1?xSnxは共晶型の混晶であり,室温におけるGe中へのSnの平衡固溶限も1%程度と小さいことからも,幅広いSn組成を持つGe1?xSnxの結晶成長,Ge1?xSnx混晶中の欠陥や界面の制御,デバイスの作製プロセスや電気的特性の制御などにおいて,解決すべき課題が多数ある.
これまでに,低温成長や薄膜のひずみエネルギーを考慮した非平衡的な結晶成長技術を駆使することによって,Si,Geなどの様々な基板上において,平衡固溶限を大きく超えた高Sn組成を有するGe1?xSnx薄膜形成が可能となっている.一方,Ge-Sn系の低い共晶温度を活かして,絶縁膜上におけるGe1?xSnx薄膜の低温結晶成長も,近年,注目されている.本論文では,Ge1?xSixSnyなどの多元系混晶材料の特長と結晶物性,ナノスケールデバイスの構築に必要不可欠な,絶縁物あるいは金属とGe1?xSnxとの界面における化学反応や電子物性の制御,混晶中の欠陥物性などについても最近の研究を詳述している.さらに,Ge1?xSnxや関連材料による電子デバイスおよび光電子デバイスの性能向上や研究開発状況などについても紹介されている.
- 論文照会先:財満鎭明,名古屋大学エコトピア科学研究所(Email:zaima@alice.xtal.nagoya-u.ac.jp),中塚 ,名古屋大学大学院工学研究科(E-mail:nakatuka@alice.xtal.nagoya-u.ac.jp, http://alice.xtal.nagoya-u.ac.jp/zaimalab/)
論文情報
- 著者
- 財満鎭明, 中塚理, 田岡紀之, 黒澤昌志, 竹内和歌奈, 坂下満男
- 引用
- Sci. Technol. Adv. Mater.16(2015)043502.
- 本誌リンク
- http://doi.org/10.1088/1468-6996/16/4/043502