カーボンナノチューブ可溶化剤の機能化

Non-covalent Polymer Wrapping of Carbon Nanotubes and Role of Wrapped Polymers as Functional Dispersants

2015.03.12掲載
REVIEW ARTICLE

Published : 2015.03.10 / DOI : 10.1088/1468-6996/16/2/024802

カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube: CNT)は1991年に発見されて以来,その驚異的な導電性や機械的強度など多くの魅力的物性からナノテクノロジーの中心材料であり続けている.CNTの基礎および応用研究を加速させたのは界面活性剤等によるCNTの可溶化手法の確立によりCNTの溶液が調整できるようになったことが大きい.様々な分子がCNT可溶化剤として作用することが見いだされる中で,近年,可溶化をさせつつCNTの機能化にも役割を担う,「機能性可溶化剤」とも呼べる高機能な可溶化剤が登場し始めた.

図21. Concept and the role of the functional dispersant.

Science and Technology of Advanced Materialsに発表された藤ヶ谷剛彦准教授と中嶋直敏教授(九州大学)による本論文:Non-covalent Polymer Wrapping of Carbon Nanotubes and Role of Wrapped Polymers as Functional Dispersantsでは,一般的な可溶化剤の分子設計や評価方法について網羅的に紹介し,最近登場した「機能性可溶化剤」の概念について解説している.さらに,機能性可溶化剤によるCNTの高機能化の実例が紹介されている.機能性可溶化剤によるドーピング効果,官能基認識能付与の例をはじめとして本著者によるCNTへの触媒ナノ粒子担持効率向上の研究例がわかりやすい.CNT表面への共有結合的化学修飾による機能化は煩雑な作業とCNTのダメージを伴うため理想的とは言い難いため,可溶化するだけでCNT機能化も達成される本コンセプトは今後ますます広がりを見せると予想される.電子デバイス,エネルギーデバイス,ライフサイエンス用途等の応用展開においてCNT実用化にブレークスルーをもたらす本コンセプトをいち早く理解するための優れた総説となっている.

CNTをその配置おいても、機能性の制御においても、自在に操ろうという本レビューは、Future Leaders in Nanoarchitectonics特集号に掲載されている.

論文情報

著者
Tsuyohiko Fujigaya and Naotoshi Nakashima
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.16(2015)024802.
本誌リンク
http://doi.org/10.1088/1468-6996/16/2/024802