ナノ粒子を如何に商業利用するか – 最適化への道筋 –

2013.04.26掲載
REVIEW ARTICLE

Published : 2013.04.26 / DOI : 10.1088/1468-6996/14/2/023001

現在,商業化されているナノ粒子は触媒,研磨剤,磁性流体から化粧品,日焼け止めと多岐にわたる.スエーデンおよびスペインの研究者らによる当該レビュー論文は光触媒,紫外線遮蔽材,日焼け止めなどに用いられるチタニア(TiO2),酸化亜鉛(ZnO),セリア(CeO2)の3種の主要なナノ粒子の合成,分散そして表面機能化について最近の成果を紹介している.

セルフクリーニング性を持つガラスを高層ビルの窓に用いることが商業的に成功してから,ビル壁面とか建造物に光触媒性,セルフクリーニング性を持つチタニアを使うことが広く関心を持たれるようになってきている.この種のコーティングはビル表面をきれいに保つだけでなく,大気中の有害公害成分を分解し,減少させる効果も持つ.更に,光触媒コーティングの除菌特性は病院内感染の原因となる細菌の除去にも利用されている.

紫外線を吸収あるいは遮蔽する透明コーティングの二つの主要利用法としては,木材表面の紫外線保護塗装とプラスチック製品の表面劣化を遅らせる耐紫外線保護膜が挙げられる.またこの特性は日焼け止めクリームの重要な要素でもあり,これらのナノ粒子を分散させることで紫外線保護特性を改善することができる.

Science and Technology of Advanced Materialsに掲載されたこのレビュー論文は,透明光触媒,ナノ粒子分散保護コーティング,日焼け止めを製造するための種々のルートや,利用するために必要なナノ粒子の構造的,化学的特性を紹介している.ナノ粒子は一旦凝集を起こすとその性能特性を大きく失うことから,著者等は,ナノ粒子を凝集させない製法に焦点をあて,最近のチタニア,酸化亜鉛,セリアの主要な合成手法を解説している.また添加することにより,無機ナノ粒子の有機媒体に対する適合性を高め,効率的な分散を可能にする有機分散剤についても紹介している.

さらに,著者等は,ナノ粒子の技術的なパフォーマンスについて述べるとともにそれらが環境に広がることへの懸念についても言及している.最後に,ナノ粒子特性を生かした多機能コーティング,複合フィルムなど,将来その発展・展開が期待される材料について述べ,ナノ粒子利用の未来を展望している.

論文情報

著者
Bertrand Faure, German Salazar-Alvarez, Anwar Ahniyaz, Irune Villaluenga, Gemma Berriozabal, Yolanda R. De Miguel and Lennart Bergström
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.14(2013)023001.
本誌リンク
http://doi.org/10.1088/1468-6996/14/2/023001