電池いらず、振るだけで光る交通誘導灯

水で発電、摩擦帯電ナノ発電機が100個のLEDを点灯

2022.02.18掲載
ARTICLE

Published : 2022.02.17 / DOI : 10.1080/14686996.2022.2030195

水をベースとした摩擦帯電ナノ発電機で振動を電気に変換、発電する技術を開発、交通誘導灯の電源として用いることに成功した。
物のインターネット(IoT)の発展や、種々の小型電子機器を携帯することが多くなり、携帯できるような小型の電源に対する需要が増えている。通常、それらは電源として電池を利用しているが、熱、太陽光、機械的エネルギーなど、環境からエネルギーを取り込む試みがある。その一つの機械的エネルギーを電気エネルギーに変換し、取り出すナノ発電機には、圧電型と摩擦帯電型がある。摩擦帯電ナノ発電機(Triboelelectric nanogenerator; TENG)は、異なる2種材料の間の摩擦から電気エネルギーを取り出すもので、高い電気出力、低いコスト、手に入れ易い、という利点があり、最も効果的な方法の一つと言える。しかし、異なる2種材料間の摩擦に依存するということには、材料の摩耗が必然的に伴い、発電機の寿命を短くすることになる。液体を用いれば、摩耗の問題は大幅に軽減できるが、固体材料に比べて、電気出力は大幅に低下する。十分なエネルギーを取り出せるだけの液体量と液体の動ける空間を確保しながら、携帯に適するように小型化することは容易でない。

Science and Technology of Advanced Materialsに、韓国、Chung-ang University(中央大学校)、Sangmin Lee教授ら、および、米国アラバマ大学バーミンガム校、Korea Institute of Technology、Yonsei University(延世大学校)の研究者らが共著発表した論文 Lightweight mobile stick-type water based triboelectric nanogenerator with amplified current for portable safety devices は、振るだけで発電できる、水をベースとした軽量コンパクトな摩擦帯電ナノ発電機の開発を報告している。

発電機は棒状で、10mlの脱イオン水、内径 25 mmのペルフルオロアルコキシアルケン(perfluoroalkoxyalkane)ポリマーチューブおよび電極からなる。この棒状の発電機を振ると、筒中の水が上下に動き、外筒ポリマーが負に、水が正に帯電する。水に帯電した正の電荷は上下蓋にもうけられた電極から取り出され、高い電気出力となる。装置サイズ、電極間距離、水量など異なる条件で、発電実験を行い、水が動くのに十分な空間、広い電極面積が保たれた最適条件では、開回路電圧 710 V、閉回路電流 2.9 mAを達成することができた。
Lee教授は、「装置のデザイン、動作機構は単純で、小型、軽量の装置であるから、日常的な使用に役立つ。発電機の中に水を注ぎ、後は振るだけで、発電できる。」と述べている。
研究者達は、この摩擦帯電ナノ発電機は 、100個のLEDライトを点灯でき、振って合図を送る交通誘導灯に用いるのに適していること、さらに日常、広い範囲で使われる可能性があることをこの研究で示すことができた、としている。

図1の説明:携帯型棒状発電機は100個のLEDライトのある交通誘導灯を点灯できる。
図2の説明:水ベース棒状発電機のイメージ図、および出力信号

論文情報

著者
Kyunghwan Cha, Jihoon Chung, Deokjae Heo, Myunghwan Song, Seh-Hoon Chung, Patrick T.J. Hwang, Dongseob Kim, Bonwook Koo, Jinkee Hong & Sangmin Lee
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.23(2022)161.
本誌リンク
http://doi.org/10.1080/14686996.2022.2030195