エレクトロニクスにも緑の革命を!

バイオ素材を使った環境に優しい各種エレクトロニクス素子の開発が進展

2020.03.02掲載
REVIEW ARTICLE

Published : 2020.02.25 / DOI : 10.1080/14686996.2020.1725395

世界中で、毎年およそ5千万トンもの電子廃材が発生し、人々の健康や環境を脅かす今、環境に優しい生分解性材料を使って各種エレクトロニクス要素素子を作ろうとする研究が進展しつつある。
“環境に優しい”を標榜する東京オリンピック、パラリンピック(2020年開催予定)では、その全てのメダルを作る金、銀、銅の地金には、“都市鉱山”とも呼ばれる集積電子廃材から取り出された再生金属が用いられる。このような努力はあるものの、電子廃材のリサイクル率は20%に留まる。残りは埋設処分され、土壌や地下水の汚染を引き起こし、あるいは闇でリサイクルされ、劣悪な環境で働く労働者が水銀、鉛、カドミウムといった毒性物質に晒される、といったことが起きている。このような不適切な電子廃材の取り扱いは一方で、金、白金、コバルトのような付加価値の高い稀少素材の膨大なロスに繋がっている。国連の報告書によれば、電子廃材中の金成分比は金鉱石中の金成分比の100倍にもなっている。 自然素材のバイオ材料は曲げることができ、安く、しかも生体親和性を持つ一方で、電気伝導性には乏しい。これを補う他の材料と組み合わせて実用可能なバイオ複合材料によるエレクトロニクスの開発が求められている。

Science and Technology of Advanced Materialsに発表された、中国、深圳大学のYe Zhou等によるレビュー論文 Building memory devices from biocomposite electronic materials は、抵抗変化型メモリー(resistive random access memory; RRAM)と電界効果トランジスター(field effect transistor; FET)を中心として、データストレージ分野におけるバイオ複合材料開発研究の最近の進展状況を解説している。
バイオ複合材料を電子素子の中に組み込むことは大幅なコスト削減を見込めるし、またその独特の材料特性からシリコン素子とは違う新しいタイプのエレクトロニクスが展開できる可能性もある。例えば材料の生分解性を生かした生体移植可能なエレクトロニクス素子といった応用である。
とは言え、研究者達が熱心に取り組んでいるのはRRAM素子に使えるバイオ複合材料を見いだすことである。RRAMは不揮発性のメモリーで、電源を切った後でもデータが保存される。バイオ複合材料は、RRAMの二つの伝導層に挟まれた絶縁層の部分に使われる。バイオ複合材料のマトリックスは自然素材の絹蛋白、ゼラチン、キトサンなどで、伝導性を向上させるために金、白金、銀などの金属のナノ粒子ないしは半導体量子ドットを分散させることが行われている。中でも、界面活性剤の CTMA(cetyltrimethylammonium)で処理したDNAは、DNA-CTMAポリマーを形成し、これに銀のナノ粒子を光電化学処理により埋め込んだバイオ複合材料を用いたRRAMは特に優れた性能を示している。
一方、FETは電界を使って電流を制御するが、有機物を使ったFETを開発しようという広範な試みがある。センサーとか、 折り曲げ可能な平面パネルディスプレーへの応用を視野に入れている。さらにバイオ複合材料を使ったフラッシュメモリーやバイオセンサーといったものも研究されている。例えば、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン(Calmodulin)を変形させたナノワイヤートランジスターを組み入れたFETバイオセンサーがある。カルモジュリンは酸性のタンパク質で、色々な異なる分子と結びつくことができ、カルシウムイオンを検出するバイオセンサーとして用いることができる。 著者達は、材料科学の発達と、素子製造とその最適化技術の進展により、近い将来、これらすばらしい材料により作られた機能性素子は商業応用の確かな候補となるであろうことを信じている。

図の説明:環境に優しい材料をエレクトロニクスの各要素素子の設計に用いるようにすれば、一年間におよそ5千万トン発生する電子廃材による環境悪化の圧力を減らすことが可能になろう。

論文情報

著者
Xuechao Xing, Meng Chen, Yue Gong, Ziyu Lv, Su-Ting Han & Ye Zhou
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.21(2020)100.
本誌リンク
http://doi.org/10.1080/14686996.2020.1725395