臓器工学:可能性と挑戦

Assembly of cells and vesicles for organ engineering

2011.10.11掲載
REVIEW ARTICLE

Published : 2011.10.10 / DOI : 10.1088/1468-6996/12/6/064703

培養軟骨,骨,皮膚はすでに医療に応用されている.しかしもっと複雑な,例えば肝臓とか膵臓組織の再生はまだ十分には実現していない.(独)物質・材料研究機構,International Center for Materials Nanoarchitectonics (MANA) の田口哲志氏は本論文で臓器組織の再生について必要とされる材料,キーテクノロジーについて広範囲に解説し,とくに臓器再生培養においては個別の細胞,小胞が集合,融合する手法を開発することの重要性を強調している.

重力は細胞の成長と機能維持に影響 - 微小重力下では細胞機能はより長い時間維持され,組織培養に好都合である.例えば微小重力下で培養した肝臓細胞は細胞間の剪断効果が減り,細胞同士の相互作用が増すために少なくとも30日は肝臓機能を維持する.骨髄細胞も微小重力下で支えとなる枠組み無しで3次元軟骨組織を再生できる.

臓器再生はパターン化した表面上で細胞培養を行うことが重要であり,そのために,細胞が親水性表面より撥水性表面に付着し易いことを利用する.微小パターン化したエチレングリコル(PEG)ブラシ表面に肝臓細胞を血管内皮細胞で下支えし培養すると十分長い時間正常に機能し,例えばこの肝臓細胞では少なくとも1ヶ月アルブミンを分泌する(図1a-1b).

細胞印刷法は臓器を模した3次元構造を作製するもう一つの技術と言える.大豆ゼラチンとコラーゲンで作製した紙の上へ,活性なほ乳類細胞をコンピューターに支援されて印刷した例がある.細胞ビーズを鋳型に入れて肉眼で見えるサイズの3次元構造を構築する試みもある(図2).

臓器再生のための材料,技術は種々の臓器,例えば肝臓,膵臓などを組み立てることを可能にする.粘着性の材料,技術は種々の細胞を融合させるための接着材として機能する.そのような粘着材料は細胞自身が粘着性分子を作り出せるようになった時には分解しなくてはならないことが指摘されている(図3).

Figure 1a: Cell sheet engineering — using Assembly of two kinds of cells using the layer-by-layer technique. 1b: Cell sheet engineering– using temperature-responsive polymer.

論文情報

著者
Tetsushi Taguchi
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.12(2011)064703.
本誌リンク
http://doi.org/10.1088/1468-6996/12/6/064703