プラズマスプレイPVD法によるリチウムイオン電池負極用高性能SiOx複合ナノ粒子の高速生産プロセス

2014.04.24掲載
ARTICLE

Published : 2014.04.23 / DOI : 10.1088/1468-6996/15/2/025006

急成長を続けるリチウムイオン電池分野では,車載用を始めとする新たな応用展開にむけて,炭素電極を超える高密度かつ高充放電サイクル特性を両立できる材料とその製造技術の開発が求められている.この要請に対して電極材料をナノレベルで構造体化することが極めて有効である事が知られているが,巨大な市場に対応しうる高い生産性を有してナノ構造化を実現する製造手法がネックとなっており,その開発が喫緊の課題となっている.

図A. Source: Sci. Technol. Adv. Mater. Vol. 15 (2014) p. 025006, Fig.4.

これらを背景にScience and Technology of Advanced Materialsに掲載された本間らによる本論文は,プラズマスプレイ法に物理蒸着用の加熱蒸発とガス凝縮過程を加えた「プラズマスプレイPVD法」を利用したリチウムイオン電池の次世代負極材料用SiOxナノ複合粒子の産業応用可能な高速製造技術について報告している.本技術の特徴は,比較的安価な工業用SiO粉末を原料として利用しながら,急速蒸発とそれに続く急速共凝縮過程を経ることで,10nm程度のSiOxナノ粒子を高速連続製造し得る点である.特にSiOx系材料の課題は,高い電池充電容量を得るためにOのSiに対する組成比xを低い値に制御することにある.Ar-H2プラズマ中へ高い還元性を有するCH4ガスを添加することによりxを効果的に減少させると共に,当該蒸気の凝縮過程において生じる不均化反応によって電池サイクル特性に優れたSi/SiOコアシェル構造(図A)も容易に実現した点は,科学的にも技術的にも他手法には無いユニークな特徴で興味深い.また作製されたナノ粒子の電極特性も詳細に調べられており,図Bに示すように100サイクルの充放電後でも容量に大きな低下は無く1000mA・h・g-1で安定した高性能を示すなど,今後の展開が期待される.

図B. Sci. Technol. Adv. Mater. Vol. 15 (2014) p. 025006, Fig.8.

論文情報

著者
Keiichiro Homma, Makoto Kambara and Toyonobu Yoshida
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.15(2014)025006.
本誌リンク
http://doi.org/10.1088/1468-6996/15/2/025006