Published : 2012.09.11 / DOI : 10.1088/1468-6996/13/5/053001
注目するポイント
現在,コンピューターのCPU等に用いられるVLSIは,集積度の向上とともに個々の素子サイズがナノサイズ領域に入り,トップダウン型のリソグラフィーによる作成が限界に近づきつつあることは良く知られている.これを解決するためのナノテクノロジーとしてボトムアップ型の分子などのセルフアセンブリー(self-assembly)が提案され,広く研究されている.
しかし,セルフアセンブリーは個々の素子の要素作成には有効であっても,高度の機能を持つ集積化されたデバイスの作成が可能になるとは考え難い.最も高度の機能を持つデバイスであるところの生体は,その設計図と言えるDNA情報からの指令によりタンパク質が必要な機能を持つように高度に集積することで構成されている.高度の機能を持つ集積化されたデバイスの作成においても,ランダムに起こるセルフアセンブリーではなく,人為的な指令によって望みの場所に,望みのタイミングで素子の構成要素が集積化されていくことが必要となってくる.このレビュー論文ではナノテクノロジーにおいて今起こりつつあるセルフアセンブリーから,指令に基づくアセンブリー(commanded assembly)へのパラダイムシフトを紹介している.著者らは光学的・電子的特性がデバイス展開の可能性を秘めているポルフィリン/フラーレン超分子系における最近の例を紹介し,基板からの電気的指令によって誘引される電気化学的結合によるナノ薄膜組織化が,より洗練された設計構造体を実現するための適切なボトムアップ製造法となりうることを強調している.また,この技術を他のトップダウン法と結合することによって,一層の汎用的有効性があることも示唆している.
論文情報
- 著者
- Mao Li, Shinsuke Ishihara, Qingmin Ji, Misaho Akada, Jonathan P Hill and Katsuhiko Ariga
- 引用
- Sci. Technol. Adv. Mater.13(2012)053001.
- 本誌リンク
- http://doi.org/10.1088/1468-6996/13/5/053001