世界をリードする日本の製鉄技術を支える重要な鋼板製造プロセス

Progress in thermomechanical control of steel plates and their commercialization

2012.04.13掲載
ARTICLE

Published : 2012.04 / DOI : 10.1088/1468-6996/13/2/023001

注目するポイント

Thermomechanical control process (TMCP;熱加工制御プロセス) は,世界をリードする日本の製鉄技術を支える重要な鋼板製造プロセスです.TMCPの確立と展開によって,鋼板の強度,靭性,溶接性,さらには生産性が大きく向上し,それによって鋼構造物の性能や信頼性の向上が実現されてきました.本レビューは,誕生以来30年,現在も進化し続けるこのTMCPの発展とそれを支える学術及び技術を紹介するとともに,様々な構造物に幅広く使用されている高性能TMCP鋼板を紹介しています.

TMCPは,高温での圧延とその後の急速冷却の組み合わせによって,加工オーステナイトから変態生成する最終の鋼板組織を微細化して制御する鋼板製造技術です.これによって省資源・省エネルギー化が実現されるとともに,高強度で高靭性な鋼板が製造されるようになってきました.学術的には微量元素による再結晶制御が重要であり,製造技術としては広幅で様々な板厚の鋼板を均一に,かつ所定の冷却速度で自在に冷却しうる水冷法がポイントとなります.本レビューは,これらに関する広範な知見をまとめ,現在の先端レベルを紹介しています.さらに,鋼板の温度やひずみ,材質を予測してTMCPを制御する計算モデルや,TMCPに供される鋼の清浄性の向上や溶接熱影響部(HAZ)靭性の更なる向上に向けた微細介在物の制御技術にも言及しています.

TMCPによって様々な高強度・高靭性鋼板が可能となり,造船や海洋構造物,建築,橋梁,パイプラインなど様々な鋼構造に適用されてきました.構造物の大型化や軽量化,耐震性や耐脆性破断などの安全性・信頼性の向上,溶接施工性の向上など,TMCPのメリットは多岐にわたっています.本レビューはそれぞれの分野の適用例を示しながら,TMCP鋼板の適用の効果を総括するとともに,今後TMCPに更に求められる性能向上と技術の方向性についても展望しています.

1万トンにおよぶTMCP鋼を用いた東京スカイツリー

参考記事

鋼板製造ラインにおけるTMCP装置概要

論文情報

著者
Kiyoshi Nishioka and Kazutoshi Ichikawa
引用
Sci. Technol. Adv. Mater.13(2012)023001.
本誌リンク
http://doi.org/10.1088/1468-6996/13/2/023001